2008年2月25日月曜日

適正人口3:日本の人口爆発


適正人口3:日本の人口爆発
━━━━━━━━━━━━━━━━━

 「国土審議会」の「静止人口について」という資料を見てみましょう。
 2005年のものでグラフ構成でわかりやすいです。
 そのグラフを解説してみます。

★ 「静止人口」について(資料1)
☆ http://www.mlit.go.jp/singikai/kokudosin/keikaku/lifestyle/3/shiryou3-2.pdf

 中国は2030年頃ピークを迎え、その人口は「14億5000万人」ほどである。
 その後減り始め、2050年には「14億人」を切るという。
 つまり、人口減少が発生しうる、頭打ちになる、ということである。
 インドはひたすら右上がりで膨張し続ける。
 2000年に「10億人」の人口が、2050年には「16億人」に達する。
 2030年で中国とインドは同数となるが、その後は中国は減少し、インドは拡大を続けるという。
 よって以後、世界で最も人口の大きい国はインドになる。

 世界で3番目に大きな人口を持つ国はアメリカである。
 今は「3億人」だが、2050年には「4億人」となる。
 アメリカが騒がれないのは、人口に対する国土の広さによって人口密度が小さいからである。
 2050年に4億人にあってもその密度は日本の1/6に過ぎない。

 ちなみに、今、インドは中国の2.3倍の人口密度であるが、これが2050年には3.3倍になる。

 ヨーロッパを見てみる。
 イギリスは2010年に「6,050万人」、これが2050年では「6,710万人」と10%ほど増加する。
 フランスは2010年に「6,150万人」、これが2050年では「6,310万人」とほぼ変わらない。
 ドイツは2010年に 「8,270万人」、これが2050年では「7,880万人」と5%ほど減少する。
 イタリアは2010年に「5,820万人」、これが2050年では「5,090万人」と15%ほど減少する。
 イタリアの人口減少は15%と大きいが、他の3国は±10%ほどの範囲の中で、増加する国、減少する国、横ばいの国という形になっている。

 そして日本だが、2050年にはほぼ「1億人」になっているという。
 このときの人口密度でイギリスとほぼ同じとなり、ドイツより2割ほど多くなる。
 フランスは国土が大きいので遠く及ばない。
 さらに2070年には「8,250万人」で今のドイツと同じほどになり、2100年にはフランスなみの「6,400万人」になるという。
 ちなみに、現在の日本は驚かれるかもしれないが、「インドとほぼ同じ人口密度」です。
 シンガポールとかモナコといったような都市国家を除けば、最貧国のバングラデッシュが1位、2位が韓国で、3位、4位をインドと日本が争っていることになります。
 そのインドとは中国の2.3倍の人口密度を持つ国なのです。

 これで、日本の人口のイメージがつかめたと思う。
 つまり、簡単にいうと狭い国土に、「とてつもない人口」を抱え込んでいる国家ということになる。


 載せられている有識者の意見を2,3見てみよう。

梅棹忠夫:国立民族学博物館顧問
 日本の人口の適切な規模は、「1億人」前後ではないかと思います。
 そのくらいまでなら人口が減少することもかまわないと思います。
 外国人の移民を受け入れることについてですが、日本では当面考える必要はないと思います。
 むしろ、日本からオーストラリアやカナダといった移民を受け入れている国に出て行っても良いくらいだと考えます。

神田玲子:総合研究開発機構総括主任研究員
 出生率が2015年までに「1.6」となり、その後2050年に「人口置換水準」である「2.07」まで回復すると、人口を長期的に「9千万人」で安定させることができる。
 こうした姿を実現させるための戦略的な取り組みが求められている。

寺島実郎:(財)日本総合研究所理事長
 2050年には1億人を割るといわれているが、余程のことがないかぎりこの予想は当たってしまうであろう。
 私見だが、「1億人」程度で「静止人口」にする努力をはじめないと、日本の民族は急速に衰亡のサイクルに入っていくのではないだろうか。

森本哲朗:評論家
 日本の人口、1億2000万人以上が仮に半分になったとしても、6,000万人いるわけです。
 日本の国土規模を考えても、西欧の国々と比較して、6,000万人ならひけをとらない。
 広い視野を持って見ると、いくら「人為的に干渉」してみたところでどうにもならない一つのエコロジカルなシステムがあるのです。
 すでに若い人たちは、本能的にそれを感じとって、選択していっているのでしょう。
 人口は増えないと思いますよ。

 なを、各年次の「日本の人口ピラミッドの変化」もグラフで載っていますので、年齢別構造の変化が視覚的に理解できてすこぶる参考になります。


 次に「参議院」の「立法と調査 2007.9」の「我が国の人口減少はいつまで続くのか」を見てみたいと思います。
 これは[PDF]でちょっと読みにくいですので、一部を抜粋し、構成を変えタイピングしながら見ていきます。

★ 我が国の人口減少はいつまで続くのか(資料2)
☆ http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/kounyu/20070907/20070907087.pdf

 国立社会保障人口問題研究会が平成18年12月(2006年)に公表した「日本の将来推定人口」によると、我が国の総人口は平成17年(2005)の「1億2777万人」から、平成67年(2055)には中位推計で「8,993万人」に減少する。
 人口が1億人を突破したのは昭和41年(1967)年のことであり、8,993万人というのは昭和30年(1955)の人口規模とほぼ等しく、2055年時点での人口規模は100年前の1955年の水準に戻したことになる。

 さらに、中位推計において2055年の「合計特殊出生率:TFR(以降:出生率)」は「1.26」と仮定されているが、以後この率が変わらないとすると、2105年の総人口は「4,459万人」まで減少する。
 明治34年(1901)の人口は「4,436万人」であるから、22世紀初頭の人口規模は20世紀初頭の水準まで縮小することになる。


 ということは、今は左右50年の裾野を持つ、人口カーブのほぼピークにいることになる。
 つまり、失われた10年とは、人口ウエーブの真ん中に当たっている、ということになる。


 出生率の性格上、出生率に目標値を設けることはなじまないといえるが、その一方で出生率が「人口置換水準:2.07」を下回り続ければ、人口減少は続くことになる。

 現在の我が国の人口は過剰であり、ある程度の人口減少は望ましいとの議論もあるが、長期的な際限のない人口減少が続き、人口がゼロに近づいていくことは、社会の存続にとって好ましいことではない。

 したがって、

①.出生率は人口置換水準まで回復し、結果的に人口減少は止まるのか、
②.その時点での総人口の規模はどの程度か、
③.我が国の「適正人口規模」はどの程度か

という議論が必要となる。


 過去のデータを見てみましょう。


 今世紀前半を通じて日本の人口は減少を続けていく見通しであり、いつ人口が下げ止まるのかについても、現状では見通しがたっていないが、そもそも我が国の「適正人口規模」はどの程度なのであろうか。

 現時点ではこれについては定説はないのが現状と言えるが、ここでは考えるための一助として、過去2世紀の人口規模を、フランス、ドイツ、英国(イングランド・ウエールズ)と比較してみることにする。

<略>

 過去2世紀の日仏独英の人口推移をまとめると表のようになる。
 明治初期の1872年の日本とフランスはほぼ同じであり、ドイツをやや下回る程度であった。
 その後、日本の人口は1945年までに2倍以上の急増を示す。
 戦後も1970年までは高い伸びを示している。

 1872年から1990年までの各国の人口増加率を見ると、日本「3.55倍」、フランス「1.57倍」、ドイツ「1.93倍」、英国「2.20倍」であり、日本が他の先進国と較べて著しい人口増を示しきたことがわかる。
 日本の場合、人口増加の規模は欧州先進各国に増して大きかったといえる。

 現在の日本の「少子化」と「人口減少」には、過去1世紀余にわたる人口急増と都市部等への集中が、急速かつ大規模に発生したことに対する反動という側面があるのではないだろうか。

 将来の「人口下げ止まり」と「適正人口規模」を考えるさいの一つの目安として、かって日本と人口規模が同じ程度であった「欧州先進国」程度(6,000万人から8,000万人)を考慮する必要があるのではないだろうか。


 つまり、この一世紀に日本では世界に先駆けて人口爆発が起こった。
 今、そのゆり戻し、あるいは沈静化が来ており、それが少子化ということのようである。

 人口爆発の対極として人口減少が進行している。
 これは分かった。ではどこまで、人口減少は進んでいくのだろうか。


 どのような規模であれ、日本の人口が一定規模で「安定する」ためには、その前提として「出生率が人口置換水準を回復」しなければならない。


 資料ではここから人口推計システムその他を用いて試算しているが、誰かに説明してもらわないと文章だけでは、ひじょうに分かりづらい。
 「エイヤー」で間違いを承知で簡単にまとめてみる(詳細を知りたい方はホームページを見てください)。

 出生率は2000年の「1.36」を採用する。
 人口置換率水準「2.07」をどの時点で採用するかで分かれるようである。

1.「2050年」に出生率が人口置換水準に回復していくケース
2.「2100年」に出生率が人口置換水準に回復していくケース
3.「2150年」に出生率が人口置換水準に回復していくケース
4.「2040年」に出生率が「1.75」に回復していくケース

 このいずれであっても、2050年の人口は、9500万人少々から1億人少々の中に収まる。
 そして、1億人を大きく超えるケースは諸般を検討してみると、可能性が低いと見積もられている。


 今世紀前半を通し、人口減少は続く見通しであり、1億人を割り込み、今世紀末までには少なくとも現在の欧州先進国なみにまで減少していく可能性が高い。

 今世紀予想される人口減は深刻であるが、過去2世紀の日本の人口増加が急激であったことも事実である。
超長期的にり、一本調子に減少し、限りなくゼロに近づいていくという見方もまた極論であり、一定のレベルで下げ止る可能性も考えられる。


 とすると2100年の日本の人口は、2050年のドイツの約「8000万人」、イギリスの約「7000万人」というのが、とりあえずの目安となる。人口ジャスト半減ならフランスの約「6400万人」になる。

 では何故、欧州先進国にあっては人口の増加減少の幅が狭く、安定しているのか。
 この理由については前に書いたことがある。
 欧州先進国の主食はパンではない、「肉」であることにある。

 肉とは牛である。
 牛の数はその放牧地の有無に左右される。
 牧草地というものは「稲作の北限」が海峡を渡るようには増えない。
 牛は動物である。
 さほど適応力はない。

 「人口数」とは「牛頭数」の従属変数なのある。
 よって、絶対に「人口爆発が発生しない食糧構造システム」を持っている。
 それゆえに、人口が安定している。
 また、肉に依存しているかぎり、そのカロリー依存率は国内生産80%の高率に維持したいと思うのは当然である。
 もし肉を輸入に依存して、それが絶えたらというのは恐怖に近い。
 牛が動物であるかぎり、その飼育はすぐに対応できるものではない。

 ところが、日本は米が主食である。
 稲は植物である。
 環境適応種を作り出すに研究の進歩によって急激な増産が可能であった。
 それゆえに、人口爆発が発生しえた。
 米は日本でなくても生産できる。
 日本産「コシヒカリ」でなければ食わない、といって餓死する人はいない。
 米は牛と比べて、差の少ない汎用の食糧なのである。
 保存食にもなりうるし、牛より臨機応変の効く食糧なのである。

 では、日本がとりうる今後のシナリオを見てみよう。


 人口の半減、ないしそれに近い水準にまでへの減少は、人口1億人の水準になれた現在から見ると衝撃的な事態に見えるが、それでも現在の欧州主要先進国なみの規模にあるともいえる。

 日本の「適正人口規模」については、日本の「自画像」をどのようにイメージするかという問題にかかっわている。

①.人口1億人規模の「経済大国」である現状を将来においても目指す
②.「中規模先進国」として自らを規定する
③.北欧諸国のように「小規模先進国」として、国民一人当たりの所得の高さを目指す


①.については、出生率の回復状態からみて、実現困難であろう。
③.については、確かに経済規模より質を重視する観点は重要だが、同時に我が国が「主要先進国」の中から姿を消すというような事態を、一部の国民は了解しても、一般の多くの国民は望んでいないであろう。
 民族的プライドをすててまで、個人の豊かさだけを求めるという思想は、日本人の思想にはそぐわないであろうと思われる。
とすると残るは、②.の欧州主要国なみの「主要国・中規模国家」の経済維持を目指すべきである、ということになる。

 よって、このレポートの「結論」はこうなっています。

 今世紀末に、「欧州主要先進国なみの水準で人口が安定する」というのが、望ましいシナリオではないだろうか。



 現在の1億2800万人がこの40年間ほどで1億人に減るということは「22%」の減少になる。
 単純にいうと、今の5人が4人になる、ということになる。近所周りを見渡してみると、相当に透いていることになるだろうと思われる。
 2050年に1億人からの減少を、その時代の国民がどう受け止めるかであろう。
 「過密が過密を呼ぶ」ように、「透きは透きを呼ぶ」ことになるでしょう。
 とすると、「まだ、多いよ」となれば、次の50年間で同じ22%減を実行すると「7800万人」になる。
 「少し、多いかな」となれば、次の50年間でその半分ほどの11%減を実行すると「8900万人」になる。

 先の「静止人口」では、識者の多くが「9000万人から1億人」あたりではなかろうか、といった意見が多いようですので、現時点での目安としては下限の「9000万人」くらいが静止人口となりうるのではなかろうかと見込んでおくのが無難なようです。
 それは、今の人口の7割くらいになる、ということです。
 回りを見て10人いるべきところが、7人になっている、そんな感じですね。
 それを多いと思うか、少ないと思うか、その環境になってみないと分からない、というのが正解でしょう。

 この数値を決めるのは、現在生存中の国民ではなく、将来に生まれてくる国民であり、我々は彼らを拘束できるなんらの手段ももたないということをわきまえておかねばならないでしょう。


 世界人口が爆発するまえに、そのテストケースとして日本人口が爆発した。
 そして今、急激に縮みつつある。
 世界人口は「突発的破局」を迎えるのか、その破局を迎えることなく、自らの手で日本と同じような「縮みのプロセス」をたどっていくのだろうか。


 最後にお隣の韓国を見てみましょう。

 先の国土審議会の「静止人口について」の最終ページに「世界人口に関する記事」というのが載っています。これをタイピングしてみます。

 少子化・高齢化で「2020年」には労働力不足
─────────────────────────
 2005年3月1日:「朝鮮日報ホームページ」より

 2005年現在の4,800万人程度が韓国の適正人口水準であるという研究結果がまとまった。

 しかし、このような規模の人口を維持しても、2020年頃には老人人口が急増し、「労働力不足」に直面するなど、人口の質は大きく低下するという憂慮も声が上がっている。
 韓国人口学会は、保険福祉部の依頼で昨年10月から行ってきた「韓国適正人口推計研究」の結果を3月1日、発表した。

 この研究によると、経済・福祉・環境の面をすべて考慮した韓国の「適正人口成長率」は「-0.5%~+0.5%」、「適正人口規模」は「4,500万人~5,100万人」となった。

 すなわち、韓国の社会や環境を勘案すると、現在の人口から「±250万人」を維持するのが適正規模だということだ。
 しかし、人口専門家らは「2003年現在、1.19で史上最低となっている出産率を最大限引き上げるとしても、妊娠可能な女性が大きく足りない。
 このままだと、老人人口の増加と労働力の不足によって、10年以内に韓国の経済構造が崩壊してしまう」と警告した。

 統計庁によれば現在、韓国では15歳~64歳の労働人口8人が65歳以上の老人1人を扶養している。ところが2050年には「労働人口:1.4人」が「老人1人」を扶養しなければならない。
 人口学会の関係者は「低出産国家である英国、フランス、ドイツなどの場合、総人口に占める老人人口の割合が15%~17%の時、経済的・社会的に最も安定していた。韓国もそのような構造が望ましい」と指摘した。
 「老人人口比率:15%~17%」は、韓国では2010年~2020年に到達するとみられる。

 これに関連して、保健社会研究院の社会政策研究室長は「現在のところでは、若い人材を海外からもらってくる以外対策はない。
 人口対策がない限り、韓国は2050年までに世界の高齢国家になるだろう」と述べた。
 福祉部は「今回の研究は急激な少子化と高齢化の対策づくりのための基礎資料だ。
 適正人口規模を維持しながら、労働人口を確保するために、社会全般のコンセンサスと努力が求められる」とした。
 韓国人口学会は本年4月末、「北朝鮮人口推計研究」の結果を総合した「韓半島適正人口」をまとめる予定である。


 韓国は先日、5,000万人を超えました。
 日本は韓国の2.5倍ほどの国土をもっており、そこでの1億2800万人に対して大半の人が多いと感じているのに対して、最貧国のバングラデシュの次に人口密度が多い韓国では、それが適正人口であるとしているのは、何とも解せないことです。

 韓国人特有の心理である「背伸び現象」とも思われるのですが。
 しかし、その適正人口もそろそろ上限に近づきつつあります。

 日本の政府機関は「適正人口規模」という言葉は使っても、決して「適正人口」という表現を使いません。
 それは国家管理された国民といった負のイメージを喚起させてしまうためです。
 「生めよ増やせよ」というスローガンで、最終的に国家侵略の道具にされ、結果として敗戦という苦い経験が国民に根強いためだと思われます。
 子どもを作るか作らないかは「個人の問題」であって、「国家が介入すべきではない」というのが一般論です。

 韓国はおそらく「5,100万人」辺りが上限人口で、そこから日本と同じように減少期に入っていくのではないでしょうか。
 それが2015年頃になるのではないでしょうか。
 この資料の推定では「2050年:4,460万人」としていますが、これは韓国でいうところの適正人口のほぼ下限にあたります。
 しかし、2065年あたりで「4,000万人」くらいになることもありえます。

 もしそうなると、静止人口は「3,600万人」くらいが見込まれますが、ここまで落ちると国力が急激に減退する懸念が生じてきますので、おそらく「4,000万人前後」あたりが下げ止まりになり、静止人口は適正人口の下限を大きく下回るのではないかと想像されます。
 これは試料として日本をモデルケースにした場合の比較です。


 なを、適正人口に関して「労働力不足」というのが、説得力ある論理のように聞こえますが、これはほとんど問題になりません。
 現代にあって、「労働力不足を人間力で補う」というのは、検討に値するテーマではありません。
 そのために、科学の進歩があり、技術の発展があるわけで、人の持つ2本の腕と2本の足をして労働量を測ろうというは、100馬力の車が買えないから、100頭の馬を持ってこないといけないといったレベルの発想によるものと同じになります。
 日本では、そのところの認識は浸透しているようで、「人間がいないなら機械にやらせればいい。そのための機械である。でなければ機械の意味がない」ということでロボットをはじめとする、人間力の様々な形での置き換えが研究され実行されています。

 「労働力不足」というのは「心配する必要のないもの」と言い切っていいと思います。
 「大きな労働力と大きな資本で、多大の製品を作り出す」という「インフレ経済」に対して、世界で始めてのこととして、日本が突入した新経済の「デフレ経済」とは、「僅かの労働力で多大の製品を作り出す」環境が整っていることをベースにしたものであり、問題はそれによって発生した「余った労働力」をどうするか、というのがテーマになってきます。

 失業者にしてしまうのか、パート・季節労働者にしてしまうか、ニートにしてしまうか、引きこもりにしてしまうか、要は余った労働力に「いかに仕事を与えるか」、それが政治のメインテーマとなってくるように思えます。

 余った労働力にいかにして職を与えて「消費力」に転化させるか。
 「労働力不足」より「購買力不足」の方が深刻な問題になってきます。
 「生産力」より「消費力」の方が経済を規定していくことになります。



 <おわり>




【Top Page】



_

2008年2月21日木曜日

適正人口2:80億人突然の破局


適正人口2:80億人突然の破局
━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 同じ「地球の適正人口」のタイトルで下記のウエブがありました。
 総務省や環境庁、国連のデータなどを使って説得力のある論理を展開しています。
 そこから、一部を構成を変えてコピーさせていただきます。

★ 地球の適正人口(1)(2) 2006/02/04
☆ http://plaza.rakuten.co.jp/mkworld/diary/200602040000/

 政府の見通しよりも1年ほど前倒しで、2005年から日本の人口が減少し始めたようです。
 不思議に思えることは、団塊世代の子供たち、いわゆる第2次ベビーブーマーが結婚適齢期を迎えている今、本来、人口が増加すべき時期にありながら、増加するどころか減少に向かいつつあることです。
 第1次および第2次ベビーブーマーは人口の構成比においてグラフ上にはっきりそれと分かる大きな山を形成していますが、第3次ベビーブーマーの山は見当たりません。

 何故、彼らは子供をもうけないのでしょうか?

 そんなことを考えながら、地球の適正人口って、一体どのくらいなのだろうという素朴な疑問が浮かんできました。
 環境問題が今グローバルな課題となってのしかかってきていますが、結局、突き詰めると環境問題=人口問題ということに帰着します。


 まずは農業生産の比較をしています。


 この地球は何億人の人類を養えるか?

1).地球はどのくらいの食料を産出できるか?
──────────────────────

<データ略>

 上記の事柄から、ここ40~50年の農業に関する進歩の具合は、だいたい以下のようにまとめられます。

●.人口は約2倍に増加している。
●.穀物生産量は3倍近くになっている。
●.よって、一人あたりの生産量は30%ほど増加している。
●.農地は約2割ほど増加している。
●.よって、一人当たりの農地は約半分程度に「減少」している。
●.単位あたりの収穫量は約2倍ほどに増加している。
●.しかし、この10年間については、そのペースが急速に鈍ってきている。
  特に1980年以降は、横ばい状態である。

 <略>

 アメリカ農務省の見解によると、2050年の世界人口はおおよそ100億人と推定されています。
 よって、単位あたりの収穫量を飛躍的にアップさせることができるかどうかが、21世紀の人類の食糧問題のカギを握っているといわれています。


 つまり、いまは順調だが「食料生産」は2050年には「人口増加」に追いつかなくなる、そういう可能性が大きい、というわけです。

 レポートは2)「森林と二酸化炭素」を調査して、「地球温暖化」について言及していますが、ここでは省略させてもらい、続きを見てみます。


3).地球のエネルギーバランスからみた適正人口
────────────────────────
 地球は閉鎖系なので、エネルギーの収支バランスが崩れれば、いずれ破局を避けることはできません。
 あるスレシオレベル(しきい値)までは一定期間、許容状態が継続されたとしても、そのレベルを超えた時、突然の破局が訪れることになります。

<略>

 UNICEF(ユニセフ:国連児童基金)の「世界子供白書1995年」は、世界に衝撃を与えました。
 それによりますと、世界の将来について、人類の前には、次の2つのビジョンが提示されており、その決定因子の最大のものは、まさに「人口」であるということでした。

●ビジョン1:
 世界人口が120億人を超えてさらに増加を続ける。
 人口増加、貧困、環境悪化が悪循環を繰り返し、人類は破局を迎える。

●ビジョン2:
 世界人口が80億人程度でピークを打ち、徐々に減少に転じる。
 国際協力が成立すれば、健康、栄養、教育、軍事、環境などの面で、より良い道を見出せるかもしれない。

 ここで、現在の60億人という人口があり、増加スピードに慣性の法則が働くことを考慮すれば、その増加スピードを容易には変えられないのは明らかである。
 「80億人」を許容レベルにするのは避けられないとして、その増加を放置すれば、破局が待ち受けていることは間違いないということを人類が理解しつつあるということです。

 そして、何とかうまい方法を考えて、人口増加にブレーキがかかったとしても、それは一つの前提条件が変わったに過ぎず、さらに別の面で対応を誤れば、すぐに奈落の底に落ちかねないということです。
 人類は今まさに「危機の瀬戸際」にいるのです。


 そして結論は。


4)結言
─────
 現在の「地球システム」は、これ以上の「人口増加には耐えられない」と結論せざるを得ません。
 これは、「人類社会の明るい未来は、・・・・・地球環境を消耗することと引き換えに物質的な繁栄を追及する現代文明の単純な延長線上には見つからない」(環境白書2000年)という帰結と一致するものです。

 地球システム全体としては圧倒的に「人口爆発」ということが問題であり、その解決の処方箋はまだみつかっていません。
 しかし、その処方箋が書けない以上、人類の継続的な繁栄もまたあり得ないことなのです。


 つまり、こういうことです。
 「人口80億人」を超えると、「ある日、突然、破局を迎える。」
 
 その破局とは、下記のようなものが「理由もなく」「前触れもなく」「突然、発生する」となるでしょうか。

 1.食糧がなくなる
 2.エネルギーがなくなる
 3.地球環境がくずれる(温暖化による洪水など)
 4.未知のスパー病原体(スパーエイズなど)の発生、あるいは遺伝子レベルでの異変
 5.人間の社会的不適応(増殖しすぎたネズミが海に向かうように)
 
 対策は、「その処方箋が書けない以上、人類の継続的な繁栄もまたあり得ない」ということで、「なし」です。
 要は「あきらめなさい」ということになります。

 過去の歴史の中にも数々の恐竜が「突然の破局」で姿を消していきました。
 恐竜も生物、人間も生物、「生物の法則」から逃げることはできないということでもあります。
 いわく「形あるものは滅する」ということなのでしょう。

 【 質問 】

 破局とは、80億人の大半が滅びることでしょうか、それとも過半は生き残るということでしょうか。

 破局を回避するために、80億人を50億人に減らすとし、その30億人にアナタが選ばれたらどうします。

 「80億人、皆で滅びりゃ怖くない」の方が精神衛生的にベターだと思いますか。

 適正人口化よりも、破局の向こうに一抹の希望をみた方が心理的安定感があることは確かです。


 Yahoo知恵袋の中で若干でも先を見通した答えがこれ。

 (日本は)本来は経済的にも国際社会の中で主要になるような国じゃありません。
 出生率低下っていうのも長い目で見れば増えすぎた人口を適正状態に戻すべく、言ってみれば人間の本能的な部分での調整がされているだけと思います。
 50年くらいは厳しいかもしれませんが、100年後200年後を考えれば人口減少というのはごく自然な話です。


 もし、人類の歴史の裏側で「破局のシナリオ」が進行しているとすれば、それに反応しているのが「人口減少」すなわち「少子化」であるということになる。
 もちろん、日本人が意識して地球の人口過剰への対策をしているわけではない。

 日本では戦後十数年で突然、長いこの国の歴史にまったくなかった国民のすべてが「銀シャリ」を食える時代がきた。
 それから高度成長期がきて、あっという間に終末のバブルが来た。
 そこでガラリと様相が変わって、次の時代に突入した。
 世の人はこの頂上期を「失われた10年」という。

 この10年に、これまでの「インフレ経済成長」に基盤を置く近代経済学にまったく見られなかった、「デフレ経済安定」が生まれてきた。
 100円ショップが生活に根付いた経済である。
 低賃金、物価安値安定の「非成長型経済」である。
 大きな国から小さな国への移行であり、右上がり国家から水平国家への移行である。

 その背景にあるのは、今地球上で進行している人口爆発の前例テストケースもどきの、日本人の「人口爆発」の片鱗と、終了である。
 ゼロから頂上までを半世紀ほどで、「近代経済学のすべてを経験してしまった」のが日本である。

 インフレ経済とは「生産」に基本をおく経済であり、その根底には「生産」がすべての基礎であるという基本認識がある。
 その究極が社会主義・共産主義であり「国家が生産手段を独占する」というドグマである。

 しかし、デフレ経済では、機械をちょっと動かせば大量の物が瞬く間に生産できるバックグランドがあって、絶えず社会の動きをみて管理していないと「過剰生産」あるいは「在庫過剰」に陥り、廃棄処分をしないといけなくなる環境に立脚している。
 「生産が消費を規定する」経済社会から「消費が生産を規定する」経済社会に移行しはじめているということである。

 すなわち、「物を作る」というのは、「いつでも作れる」というレベルに達してしまった経済である。
 よってここでの主眼は、消費者は何を望んでいるのかを見極める目を持たねばならないことになる。
 でないと「売れない物あふれ」が発生してしまうことにもなりかねないのである。

 「作る側」ではなく「使う側」に主導権が移ってしまった経済である。
 そして、その先に見えたものが「デフレ安定」と「人口減少」である。
 いいかえれば、日本という海に囲まれた領域のなかで、地球人口爆発のコンパクトモデルが実験された、ということである。

 なを、現在の経済の主導権を握っているのはアメリカであるが、アメリカ経済は今後とも「インレ成長」を主眼にしていく経済である。
 というのは、この先さらに1億人の人口増加が見込まれている、からである。
 ということは、日本は世界の主流でない、新デフレ経済の曲面を単独の判断と舵取りで進んでいかねばならない運命を背負い込んでいるということになる。

 「適正人口」とは社会主義のようにオカミが人為的に操作するような感じに捉えられることが多い。
 そのため人口爆発の場合はその頂点を「上限人口」、減少傾向の場合は「静止人口」と言うことが多いようである。
 静止人口とは下限人口ではなく、安定人口といった意味が強い。

 日本は「1億2780万人」でピークを迎えた。
 次回は減少に入った今、どこで静止するのか見ていこう。


 なを、「世界の食糧事情」については、下記の農林水産省のホームページが図解でわかりやすいです。それによると、現在トウモロコシ生産量の20%がエタノールガソリンに使われているそうです。

★ [PDF]世界の食料需給の現状
☆ http://www.jaicaf.or.jp/news/lecture_6_2007-1.pdf



<つづく>



【Top Page】




_

2008年2月15日金曜日

適正人口1:世界の人口増加


適正人口1:世界の人口増加
━━━━━━━━━━━━━━━━

 「海水淡水化」を見てきましたが、この背景には世界の人口増加という問題が厳然と控えています。

 日本では人口頭打ちから減少傾向にむかい「少子亡国論」がでたり、「少子化担当大臣」が設けられたりしてていますが、一方の中国では「一人っ子政策」が実行されたりしている。
 それぞれの国内事情で反応が違うようです。
 人口増加というものが好ましいものなのか、慎むべきものなのか論が様々にあって一定していません。

 国ではなく、世界・地球というレベルで見てみるとどうでしょう。
 人口増加が発生するのは基本的に増加した分、貧しくとも「食っていかれる」からでしょう。
 もし、食べていかれなかったら、増えるはずがありません。

 生存可能だから増えるのです。
 生存できなければ増えません。

 人間とて生物の一種に過ぎません。
 動物とは違った種類の生き物ではありません。
 よって生物法則にのっとってその数が上下するのは当然のことです。
 過去に人類の数が少なかったのは、食べられなかったからであり、現在その数が爆発的に増大しているのは、爆発的に食糧事情、すなわち農業生産が増えたからにほかなりません。

 人間が一般動物と異なっているのは、耕作して食べ物を作りだすという技術を身につけているからです。
 一般生物は自然から与えられた食料に依存しています。
 人間はそれに若干の手を加え、食料を計画的に生産し、かつ貯蓄することができる生物になっています。

 「エタノール・ガソリン」というのがあります。
 トウモロコシからとったオイルをガソリンに使っています。
 つまり、本来なら人の口に入るべきものが、食料としてではなく別の製品に使われているということです。
 それだけ農産物が余っているのです。
 ですから人口が増えているのです。
 あたりまえの事ですが増大を可能にする条件があるからこそ、可能になっているのです。

 では何故、日本の人口は減少に向かっているのでしょう。
 生物法則からいうと、きっと「食えない人間が多数発生したため」である、ということになります。
 戦後の混乱期には餓死者が多数でました。
 「遺伝子組み換え食品」で書きましたが、それが十数年で突如、日本の歴史の過去に全く存在しなかった事態、すなわち国民全体が「銀シャリの食える時代」が到来したのです。
 そして人口はどんどん増え続け、今では1億2800万人弱になりました。

 それが、2,3年前から少しづつですが、減りはじめています。
 そして、なんと食料自足率はカロリー比較で40%にまで落ちてきています。
 となれば結論は一つしかありません。
 「国民が飢えて食えなくなってきている」。
 ほんとうでしょうか。

 どうも違うような気がするのですが。
 きっと「メタボリック・シンドローム」などというのは、マスコミが作った幻影で、実際にはありはしない。
 あるとしたら「キガボリック・シンドローム」にちがいない、ということになるのですが。
 「飽食の時代」は間違いで、「飢餓の時代」が近づきつつあるらしい、となるのですが。


 いったい、人間というのはこの地球という「限界のある面積」の中でどのくらい生存可能なのか。
 一般生物としてではなく、食料を自ら作り出す能力を持った生物として、すなわち自然的生物としてではなく「社会的生物」として、どれほどの数が生存できるのだろうか。

 「地球適正人口」で検索すると50万件、「世界適正人口」で検索すると96万件、単に「適正人口」で検索すると200万件も出てきます。
 もちろんこんな数の内容をチェックなどできません。
 最初の20、30をチェックする程度です。
 頭に出てくる十件を取り上げても実にドラマチックです。

 たとえば、トップサイトはこんな感じ。

適正人口の管理
1.許容人口の決定
  資源からの許容人口と環境許容人口を総合評価。
  地球上の許容人口を地域別などに細分化して決定。
2.出生コントロール
  人口のコントロールはもっぱら出生によって行う。
  地域別、人種別などの格差を是正しつつ管理する。
3.終末管理
  人口減少のための殺人や中絶などを厳禁する。
  終末では延命よりも生存の内容を重視する。

 「おいおい、やめてくれ」と言いたくなります。
 怖いです。
 この方、きっとショック療法を考えているのではないかと思うのですが。

 次は「地球の適正人口は何億人か」という問いに対する答え。

 地球の人口とエコロジカル・フットプリント(地球個数表現)を図に示す。
 図は人口とエコロジカル・フットプリントの原点を一致させてプロットするとほぼ傾きが同じとなる。
 これから何がわかるかというと、地球1個に対しての適正人口は約50億人という。

 現在、オーバーしている十数億人はどうなるのだろう。

 どれを取り上げても、「現在人口65億人は多い」と出てきます。
 「どうもおかしいと思うのです。」
 なぜなら、いま実際に65億人が住んでおり、これから80億人ぐらいまで増えようとしているのです。
 食料が石油の替わりにガソリンに使われているのです。
 それで「多い」と言っているのです。

 まずはじめに「適正人口」ありき、で進んでいるように思えるのですが。
 適正人口を決めて、それにあわせて食糧生産をし、適正人口以上の人口は抑制すべきである、といった論理に聞こえるのです。

 人口論的社会主義というより、はじめ神サマがいて、神サマが人間を作り、その人間に合わせて自然を作った、いま人は神サマが作った以上に増えている、これは神への冒涜だ、といった宗教感覚に聞こえてくるのですが。

 適正人口のバックデータを探していきたいと思います。


 「Yahoo知恵袋」にもいろいろな質問が寄せられています。
 まずは、地球の適正人口について。


質問(2006/08/13):
━━━━━━━━━━
 地球の人口は、全世界で毎年1億人増加しているそうですが、地球の適正人口は、何人ぐらいなんでしょうか?。
 仮に、すべての医療行為・薬品の使用を中止すると、「大自然の摂理」によって適正人口になりますか?

ベストアンサーに選ばれた回答
----------------------------
 現在の地球には65億の人がいますが、穀物の生産は、品種改良と灌漑(かんがい)、肥料や農薬の利用で50年間に2.5倍にも増えましたが、農地の4割が劣化(れっか)してしまい、穀物生産をこれ以上増やすのは難しくなりました。
 穀物は年に20億トン生産され、動物のエサでなく人が直接食べれば、100億人が食べていけます。
 ですから「大自然の摂理」にまかせるのがどういうことだと貴方が判断されているか分かりませんが、地球上に餓死する人がいる現在の状態は自然の摂理に反しているのかもしれませんね。

ベストアンサー以外の回答
------------------------
 適正規模の概念で異なります。
 簡単に言えば、「生活水準」で異なり、米国並・日本並・東南アジア並などです。
 すべての医療行為・薬品の使用を中止するだけで、大自然の摂理による適正人口ということになりますか?
 恐らく、その可能性は10%以下でしょう。
 江戸時代の日本は、最高で3千万人ほど。
 同じ国土にいまは1億2500万人。
 人が 生存するだけと、健康で文化的生活をすること、は違うでしょうし、なにが適正か難しいところ。
 「自然の摂理」といっても、現代はアメリカのように、食糧を戦略物資と位置づけ、タネは輸出しないなど いわば自然を管理下に置いてますから。
 まぁ、地球の気候に偏重をきたすほど人間が増えている「人口爆発」の今は明らかに適正人口を超えている、とはいえるでしょう。


 次は、日本の適正人口について。


質問(2007/01/03):
━━━━━━━━━━
 日本の人口1億2千万人は多すぎないですか?
 食料自給率が低く輸入に頼っているから成り立つのではないでしょうか?

ベストアンサーに選ばれた回答
----------------------------
 私も多すぎると考えますね。 
 やはり、国土の居住可能面積に対する適正人口というのがあるだろうから、食料自給自足の要する面積も考えると、人口が増えすぎるのは問題がありますね。
 食糧の点については、輸入に頼る現在の形式は問題があって、仮に世界全体の食糧自給不足の状況になったときに、日本の場合は自給率がカロリーベースで約40%ということだから、一気に大事件になる。
 そのときに慌てて作ろうとしてもできることではないだろう。
 そのように考えると、日本の人口は多すぎるんじゃないかな、というのは同感です。
 関連ですが、食糧の輸入自由化には当然に反対です。
 これは、日本の食糧の自給部分を潰しかねない。
 そうなると前言通り、世界食糧不足が発生したときの深刻度合いが大きくなるからです。

ベストアンサー以外の回答
------------------------
1.
 私も多いと思うし、本来は経済的にも国際社会の中で主要になるような国じゃありません。
 出生率低下っていうのも長い目で見れば増えすぎた人口を適正状態に戻すべく、言ってみれば人間の本能的な部分での調整がされているだけと思います。
 50年くらいは厳しいかもしれませんが、100年後200年後を考えれば人口の減少というのはごく自然な話です。
2.
 多すぎはしないと思いますよ。
 集中しすぎているとは思いますが。
3.
 食料自給率が高いと推測される1900年の人口が約9000千万人であったのだから、人口が多すぎるということはないと思います。
 人口よりも少子高齢化のほうが問題ですね。日本の力が減少していきます。


 ちょっと踏み込んだ内容の質問がこれ。


質問(2007/10/20):
━━━━━━━━━━
 なぜ日本だけが、食料自給率が少ない国として人口大国でありうるのでしょうか?
 日本より人口が多い国は全て食料自給率は80%以上です。

ベストアンサーに選ばれた回答
--------------------------------
 今の所、大規模な国際的な不作や冷戦後に大規模な国際紛争が発生していないから。
 戦後直後は食糧購入の金も無く、備蓄も使い果たしていたので、現実大量の餓死者や栄養失調を排出しました。
 地球温暖化による地球規模の天候不純が発生しており、今後、世界的な規模の不作が発生する可能性が在ります。
 このような状況で他国が自分の国の分を削ってまで日本に売ってくれるでしょうか?
 今まで、偶然と冷戦構造が重なって売って貰えていただけですし、少し前まで日本の自給率は70%を超えていましたから問題では在りませんでしたし、日本は備蓄米を持ち、米は保存穀物としては優れた性質の食糧です。
 今だけの経済状況で楽観視していても必ず将来ひどい目にあいます。

 現実、日本食ブームでマグロが高騰しています。
 10年前、日本人以外でまぐろをここまで外国人が食べるようになると誰か予想出来たでしようか?
 日本人が食べるマグロはどんどん無くなりつつ在ります。
 海外からの輸入に頼るのは非常に危険な事です。
 魚は以前程、たくさんとれません。
 にしん・いわし・たらetc。

 自給率下げたらただでさえ、老人人口が圧迫している米農家は採算性と価格競争から破綻します。
 ブランド米ではない地方の農家は廃業し、農地から波及して地方地価は下落、地方経済は担保資産を失います。
 こうして、地域格差、特に東北と中国・四国は壊滅的な打撃を受けます。

 アメリカや中国の米との競争が決定的に違う点は農作地価と規模です。
 また、日本の山村風景や里山環境等弥生時代から続いて来た米作の風景と環境は徹底破壊されます。
 玄米を食べ様にも地方の農村共同体が破綻しますから、米は一部でしか作られなくなり、全体には回らなくなります。
 米の完全輸入フリーは日本を壊滅させます。
 無論、そこで直に餓死はおきませんが、自給率をさげたまま輸入に依存すれば、世界的な凶作の時に餓死者は間違い無く出ます。

 いざと言う時に第一次産業をやれと言ってもそんな簡単な物で無い事は第二次大戦後の飢饉がその事を良く証明しています。
 米が余っているのは今現在の話で、米農家が壊滅した後では在りません。
 米農家が壊滅すれば生産料は落ち込みますからすぐに備蓄も底をつきます。
 日本は山間産地が多い為、無論大規模農法には適しませんしね。

ベストアンサー以外の回答
------------------------
1.
 買う金があり、売ってくれるから。
 これが金がなくなり、売ってくれていた国が食料不足になったら・・・・。
 日本人は何人飢え死にするかわかりません。
 これは、現実の未来かも知れません。
 他にもいろんな食料危機のシナリオがあります。
 まだまだ楽観主義の方がおられますね。
 いざとなったとき一番国を批判する輩になるんでしょう。
 悲しいです。
 最終的に危機の時は自分事は自分で守ると云うことを肝に銘じています。
2.
 貧困富裕の差だとおもいます。
 貧困の国は、自給せざるえない環境・・・
 富裕の国は、金の力があるので・・自給しなくてもよくなった。
 日本はこれからは、自給しないといけないでしょう。
3.
 一番多く買っている食物は、飼料穀物です。
 次が、海老や贅沢な食品です。
 贅沢食品と、飼料を買わなければ、今でも自給率は60%位有ります。
 即ち、飼料で作る肉と、グルメ食を食べなければ、輸入金額は激減します。
 「餓死」などはしませんよ。
 米は余っているのですから、、また生産余力が充分ありますから「餓死」なんてしませんよ。
 肉と、グルメ食は続けられないかも、、、、涙! 
 玄米、お新香ウ、お野菜、魚、たら腹食べられますよ、、、
 これ等の食品で、自給率を90%に持って行くのは簡単な事です。
 貧乏になったら、玄米を食いなさい!!!!!
4.
 我が国の主食である「コメ」が単位面積当たりの収穫率が高いことがあげられます。
 これがパン食だったとして小麦畑を作るとしたら到底まかなえようはずがありません。
5.
 人口密度が非常に高く、しかも生活水準が高いからです。
 現在の食生活の水準を維持しながら、約1億の全員を国産だけで食わせていくことは始めから不可能です。
 鎖国状態、即ち自給自足状態が維持されていた、江戸時代の人口は約3,000万人でした。
 技術の進歩を考えても、多くを輸入に頼らざるを得ません。


 なるほど。
 いろいろな意見があります。
 ざっと検索しただけで、これほどのデータを集められるのが電子網のスゴさ、というより恐ろしい。

 でも、ちょっと考えると分かる矛盾があります。
 例えば、食糧危機が来たとき、一番安心していられるのは「自前で食糧を生産してところ」とは、考え易いですが果たしてそうでしょうか。

 なぜなら、「食糧危機」というのは「生産地を最も強烈に直撃する」ものなのです。
 消費地はその危機を分散できます。
 でも生産地はそれができません。
 もろ、そのままダメージになります。
 リスクを回避する手段がありません。
 ために、食糧危機がきたときは、食糧消費地は食糧生産地に対して、手持ちの食糧の一部を割いて食糧援助をすることを強いられるはずなのです。
 経済学のやさしい法則です。

 ここは数年来の干ばつ。
 政府の手厚い保護支援政策にもかかわらず、農業を離れる人は後を絶たない。
 しかし、街のショッピングセンターにはあふれるばかりの食料品が売られている。
 干ばつなんのその。

 アジア、北米、南米から、世界中から食品が集まってきている。
 果物はすべてアメリカ産である。
 農業国でありながら地元のものを探すのに苦労する。

 壮年以上の半分は「肥満」。

 干ばつ何処吹く風である。
 苦しんでいるのは生産者である。
 貨物に改造されたジャンボのおなかにたらふく抱え込まれた食糧が、売り先を求めて世界中を飛び回っている。

 その他にも、「そうだろうか」という説もありますが、人それぞれの考え方によります。


 もう少し詳しく、見ていきましょう。



<つづく>



【Top Page】




_

2008年1月27日日曜日

海水淡水化4:シドニーとブリスベン


● 漏水チェックの奨励:「水を大切に」


海水淡水化4:シドニーとブリスベン
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 没頭に挙げたコメントを再録してみます。
『 
 報道されているクインズランド州では、「下水再利用」の是非を問う住民投票も取りやめるとのことで、切羽詰った状況がうかがえます。
 しかし、海水淡水化には、多量のエネルギーを投入する必要があったり、プラントの整備に多額なコストが発生したりします。
 ニュースにある下水のリサイクルに比べれば、心理的には海水淡水化のほうが受け入れられやすいと思いますが、クインズランド州の場合は、それを選択できない事情があるのでしょう。


 その事情であるが、推論してみると2つあるのではないかと思われます。

 一つは海岸線の風光明媚を歌い文句に観光産業が成立していることである。
 ブリスベンを中心に南にゴールドコースト、北にサンシャインコーストがひろがり、年間の観光客数は膨大なものになり、クインズランドの産業の柱になっている。
 その海岸に不細工な淡水化施設を建設するわけにはゆかない。
 ゴールドコーストの隣はニューサウスウエールズ州になるため、もしプラントを造るとしたらサンシャインコーストのはるか向こうしかない。あまりにも遠すぎる。

 二つめは、ここは環境保護団体の力のひじょうに強い、ということがある。
 シドニーは猛烈な反対で計画が一時棚上げになり、水源地の貯水量が30%を切るようなことになるまで検討しないという約束事がありましたが、2007年になって州政府はこれを反古にして、建設計画を推進したという経緯があります。

 クインズランドでは過去にモーターウエイを建設するさいに、その路線上にコアラの生息地があり、州政府はこれを保護して別の保護地へ移転させる計画を提示したが、強硬な反対にあい、このため次の選挙で州政府がひっくり返り、野党が政権を握ることとなり、モーターウエイ路線の変更が行われたという経緯があります。
 クインズランドでは「環境保護」は圧倒的な力をもっており、その顔色を伺いながらの政治をするといった状況のようです。

 このようなことで、ブリスベンでは海水淡水化計画は実行されないのではないかと思います。

 しかし、これは絶対的な説得力を持っていない。
 パースは人口150万人でブリスベンとそこそこ似ている。
 そのパースは150キロ遠方にプラントを作り、パイプラインで引っ張ってきて、上水道につなげようとしている。
 距離は説得力にはならない。
 それだけの距離を見ればブリスベンでもプラント候補地はあるはずである。

 環境保護団体の圧力も、絶対的ではない。
 シドニーでは市民との約束を反古にしてまで強行している。
 道路路線のように代替案がいくらでもあるようなら別だが、日常に欠かすことのできない水となれば、話は別のものである。
 生活が脅かされるともなれば、環境がどうのこうのとは言っておれなくなるはずである。

 パースは日量40万トン造り、水道の1/3を海水淡水化水に置き換えようとしている。
 シドニーは日量25万トン、メルボルンは日量41万トンである。
 それに対してブリスベンはたった日量6.6万トンしかない。

 ちなみに、この建設費は17億ドル(約1700億円)です。
 シドニーが20億ドル、メルボルンが31億ドルです。
 たった日量6.6万トンなのにシドニーにひけをとってはいない。
 もしこの金額をシドニーに当てはめると日量21万トンが供給できることになる。
 しかし、ブリスベンはその1/3でしかない。

 「どうにも理解しづらい。」


 シドニーとブリスベンを比較してみたいと思います。

 シドニーの人口は「430万人」、ブリスベンの人口は「180万人」で、シドニーはブリスベンの2.5倍ほどの人口を持っています。

 シドニーの水源ですが、郊外のブラギラング湖(ワラガンバ・ダム)は面積「75km2」で、体積「2km3」です。
 この大きさがどのくらいかというと、面積で十和田湖の1.2倍ある。
 体積で半分である。
 これは十和田湖の水深が70mとひじょうに深いためである。
 単純にいうと、大都市のたった40kmほどに深さが半分ほどの十和田湖があるということになる。

 とんでもない街ですね。
 雨さえ降ってくれれば、底抜けに恵まれた環境といえる。
 だからこそ個人住宅にプールなどがもてるのです。
 シドニーはここから80%の給水を行っています。

 ではブリスベンはどうでしょう。
 同じようにすぐそばに、ワイバンホー湖とサマセット湖という2つの湖を持っています。
 2つあわせた面積は「150km2」で、シドニーのブラギラング湖の2倍。
 ただ平均水深が浅いため、体積はブラギラング湖より小さくなり、3/4ほどの「1.5km3」である。
 ちなみに霞ヶ浦の面積の2/3の大きさ、体積は1.8倍である。これは霞ヶ浦の平均水深が4mほどとひじょうに浅いためである。
 ブリスベンの主水源はこの2つである。ここも恵まれ過ぎている。
 
 きっとオーストラリア人も「水はタダだ」と思っているのではないでしょうか。

 これを人口比でくらべれば、どうなるか。

 シドニー:
  2km3/(430万人×80%)=2/344=5.8

 ブリスベン:
  1.5km3/180万人=1.5/180=8.3

 ブリスベンはシドニーより50%アップの有利な条件の水源をもっていることになります。
 ブリスベンとは輪をかけてとんでもない街ですね。
 イスラエル人が激怒しそうです。
 シドニーの将来造水量は50万トン、人口を2.5倍とすれば、ブリスベンは日量「20万トン」の水を生み出さないといけないことになります。
 有利な水源を顧慮に入れれば、10万トンもあれば「何とかなる」という判断もありうるということになります。

 これは想定ですが、この有利さがブリスベンをして海水淡水化をやめ、「下水再生飲料水化」に走らせたのではないかと思うのです。


 「日豪プレス」より一部を引用します。

 現在、ブリスベン川に放流されてモートン湾に流れ込んでいる処理済下水の大部分を再利用することになっている。
 高度処理水のかなりの部分が2つの「石炭火力発電所」の冷却水として用いられる。
 余裕があれば農業用水に充てられる。

 「処理水の残り」は、ブリスベンの飲料水貯水池のワイバンホー湖に放流される。

 プロジェクトは2期に分けて建設中である。


 つまり、簡単にいうとブリスベンの「下水再生飲料水化」とは大きなプロジェクトの"おまけ"なのです。

 予算の半分以上は石炭火力発電所の冷却水を確保するために使われるわけです。
 オーストラリアは世界で最も良質の石炭を産出しますので、信じられないと思いますが火力発電所の大半が「石炭発電」です。
 一部には自前の天然ガスで発電するところもありますが、大掛かりな石油発電はありません。
 石油を使うくらいなら天然ガスの方がコストの低減になります。
 原子力発電所は実験用にあるだけです。
 とはいえオーストラリアはウランも輸出していますし、インドネシア政府との取り決めを引き継いだチモール沖では石油採掘もしています。
 オーストラリアとは「エネルギー大国」なのです。
 京都議定書への参加を強固に拒んでいた背景には、この自前のエネルギーに対する保護政策があります。

 さらに引用を続けます。

 第2期、2008年末までには、ラゲッジ・ポイントとギブソン・アイランドの既存の汚水処理施設に並んで建設される2カ所の新規高度汚水処理プラントが、大量の再処理水をワイバンホー湖に放流する。


 6カ所の汚水処理施設のうちの4カ所の処理水は冷却用に使われ、余りが農業用にまわされる。
 残りの2カ所の処理水が飲料水とするためワイバンホー湖に放流され、それが日量6.6万トンということになります。

 下水道量は日本でもそうですが、上水道量と同じと考えられています。
 庭に水撒きしたり、川に流さないかぎり、使った水は下水配管を通して戻っていくと考えられています。
 つまり水道量とリターン量は一致するわけです。

 よって、下水を上手に汚水処理し、それを水道に回すことができれば、「水の永久循環」ができると考えられています。つまり、原則的に水不足などというのは生活用水に関してはありえないことになります。
 ご存知のように宇宙船のような場合はこれが実際に行われています。

 これまで見てきたように、ブリスベンはひじょうに有利な水源をもっています。
 これに全排水のリサイクル活用システムが加われば、上水道管の流水量は常に一定しており、生活用水はほぼ満たされる、ということになります。
 人口増加といった特別な事情が発生しない限り、使った水を繰り返し使うわけですから、家庭用水の使用量の増加はリサイクル可能容量に中であれば十分対応できる。
 もし、可能容量を超えたら自動的に節水制限を行い、「前回より使い過ぎています」と警告を発すれば済むことになる。

 これがブリスベンをして、海水淡水化を実行しえない理由ではないかとおもうのですが。


 「下水再生飲料水:清浄化水」の使用は住民投票にも表れるように、市民には嫌われます。
 技術的、経済的に十分に清浄で安全な水が作れることは頭で分かっていても、感情的に拒否感が表れてしまいます。
 そのために、水道管に直接流し込むという方法は出来ない相談になります。

 ブリスベンのように大きな湖に一度放流して、湖水とまぜ、それから再取水して通常の浄水処理を経て供給される、という手続き的な処理がどうしても必要になります。
 これによって心理的安堵感が生まれます。
 同じように都市部に近接して大きな貯留湖を持つシドニーでは可能でしょう。
 では、他の都市ではどうでしょうか。

 ブリスベンで一度受けられてしまえば、再生飲料水はおそらく燎原の火のごとく普及していくのではないでしょうか。



 「海水淡水化」は長くなってしまいました。
 これで終わりますが、最後にもう一つ。

 時のクインズランド州首相は、住民投票を実行しない決定を下した後、この下水から生み出された「再生飲料水」を自分で飲むというパフォーマンスをして、事業への理解を訴えたそうです。

 そして、2,3カ月後、「家族との時間を大切にしたい」というなんだかかよく分からない名目で、突如、首相を辞任してしまいました。
 54歳です。通常ならこれから本格的な政治活動を、というところ年齢です。
 「下水を飲まされるのか」というバッシングに嫌気がさしたのであろうと噂されているようです。

 その後をついで首相になった方は、この州にして始めての「女性首相」とのことです。
 再生飲料水の喜悲劇といったところでしょうか。



 逆浸透膜式については、下記のページが写真と図での解説で解りやすいです。

〇 [PDF]期待される膜利用水処理技術
★ http://www.toray.co.jp/ir/pdf/lib/lib_a083.pdf


注:
 オーストラリア関係で出典を明記していないデータならびに記事は、日豪プレス2007年9月号「危機的水不足と残された解決策  スチュアート・カーン博士(NSW大学)」から引用しています。



 <おわり>



【Top Page】




_

2008年1月25日金曜日

海水淡水化3:オーストラリア


● 水道メーターの読み方指導


海水淡水化3:オーストラリア
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

最近、長雨が続きオーストラリア各地では洪水が発生し、干ばつ状態も危機レベルを脱しているようです。
しかし、いつまた元の状態に戻るかは自然のこととて分かりませんので、都市部に限っての水不足対策としてどんな対応をしているのかという点に絞ってみてみたいと思います。

 オーストラリアからの発信はすこぶる多いのですが、データが錯綜しています。

 というのは「オーストラリア」とは連邦政府で、その下にいくつかの「共和国」があり、それぞれが独立した「政府」を構成しているためではないかと思います。
 よって「首相」が数人いることになります。
 日本ではこの共和国が「州」と呼ばれているため、地方自治体としての「県」と似たようなもの、という感覚で捉えしまうので、統一性に欠ける国だという印象をもちやすくなっています。
 「水不足対策」は州(共和国)の管轄であり、オーストラリア連邦政府が口を出せる事柄ではありません。

 シドニーを首都にする「ニュー・サウス・ウエールズ国」、メルボルンを首都とする「ビクトリア国」、ブリスベンの「クインズランド国」、パースの「西オーストラリア国」、アデレードの「南オーストラリア国」といった感じです。
 ですからオーストラリア政府は資金援助だけで、手を出しての水不足対策はしていない、といってもいいでしょう。
 「州とは国である」ということを念頭において見ていかないと、分かりにくくなります。

 「日豪プレス」とそのホームページをメインならびに、それぞれの州から個人的に発信しているホームページの中から拾っていきます。


 はじめに「オーストラリア連邦政府」は各州都の水不足対策をどうみているかというと、下記のものあります。
 記事文ですので、分かりやすく構成しなおして、一部をコピーします。

○ 日豪プレス オーストラリア 最新情報 シドニー メルボルン
★ http://www.25today.com/news/2007/09/post_1475.php

----------☆☆ すべての州都に脱塩淡水化施設を ☆☆----------
2007年9月24日

 9月21日、ピーター・コステロ「連邦」財務相は、渇水に悩む都市すべてが「脱塩淡水化」施設を持つことを提唱している。

 西オーストラリア州のパースにはすでに施設があり、もう一つ施設の建設が計画されている。シドニーは現在「建設中」、メルボルンも近隣地区に施設を「提案」している。

 コステロ財務相は、ABCラジオに出演し「州都はどこも水不足に悩まされている。
 解決するには脱塩淡水化しかない。
 ビクトリア州(メルボルン)にはそれが一つもない。
 南オーストラリア州(アデレード)にもない。
 それに対して中東は全域が脱塩淡水化に頼っている」と語り、さらに「水製造には脱塩淡水化は実績のある機能だ」としている。
 しかし、一方、「イオン交換脱塩淡水化には莫大なエネルギーが必要になる」ことをも認めている。

 オーストラリア自然保護財団(ACF)は、オーストラリアの水問題解決策として、「脱塩淡水化」は万能薬ではないとしている。「政府は、節水と下水再処理水の分野にもっと投資すべきで、脱塩淡水化は最後の手段と考えるべきだ」という。
 また、「オーストラリアが水不足に襲われている大きな理由は、われわれが温室ガスを大量に出していることが原因だ。だから、全ての州都に「エネルギー集中型の脱塩淡水化施設」を建設することは前向きでもなければ、問題に対して長い視点で解決するものでもない」と語っている。


 この「連邦」財務大臣の発言を軸に見ていくことにしましょう。

 まず、最初に出てきたのが西オーストラリア州の「パース」です。

①.【パース】
━━━━━━━
 パース」の水事情がWikipediaに載っていました(人口:150万人)。


----------☆☆ Wikipedia ☆☆----------
 水事情  近年、異常気象により降水量が減少しており、30年間でダムへの流量が三分の二に減少している。
 さらに人口増加が比較的高いため、パースが10年以内に「水切れ」になってしまうという懸念が生じている。
 西オーストラリア州政府は対策として家庭でのスプリンクラー使用を制限し、クイナナ(Kwinana)に淡水化プラントを建設し、2007年から稼動している。


 「陸奥月旦抄」より、一部をコピーさせていただきます。

○ 陸奥月旦抄
★ http://blog.goo.ne.jp/charotm/e/be941f511b429b3fda602d7ae05407c9

----------☆☆ 陸奥月旦抄 ☆☆----------
2007年5月17日

 西オーストラリア(WA)州政府は15日、パースの150キロ南方に位置するビニンガップ(Benningup)近郊に総工費9億5,000万豪ドル(約950億円)の淡水化プラントを建設する計画を明らかにした、と地元各地が伝えた。
 
 同州は6カ月前、パース南方41キロの場所に「国内初」の淡水化プラント(総額4億豪ドル:約400億円)を開設し、4,500万キロリットル(日量12.3万トン)の供給を始めていた。
 
 2つ目の工場も風力発電で、動力源にしていた最初のものと同様に、再生可能エネルギーを利用。
 供給量は当初の4,500万キロリットルから最終的に1億キロリットル(日量27.4万トン)に引き上げる予定。
 2010年には両工場合わせて州全体の水道の3分の1(日量約40万トン)をまかなうという。

 同州のカーペンター首相は、州内におけるダムの水源としての割合が、30年前の90%から25%まで低下していると指摘する。
 新しい水源やリサイクル、需要管理によって、年間1億8,000万キロ(日量約50万トン)の水が追加された計算になると述べた。


 整理してみる。

 西オーストラリアは既に2007年に「日量12.3万トン」の淡水化プラントで供給を始めている。
 さらに最終目標「日量27.4万トン」のプラントを2010年までに建設する予定である。
 2つ合わせて「日量約40万トン」とし、水道の1/3をまかなう予定である。


 イスラエルの施設が33万トンですので、2つの施設で40万トンとは大規模な施設になる。
 特徴は「風力発電」を使っているということである。
 風が吹いているときはいいが、止まったらどうなるのかということは書いていない。
 「再生可能エネルギー」を利用しているとしているが、内容は不明である。
 「逆浸透膜式」であるが、果たして風力発電だけで可能なのであろうか。
 もし、風力発電だけで淡水化を実現できるとしたら「エネルギーの瓶詰め」という汚名は返上できることになる。

 しかし、連邦財務相が言うように莫大なエネルギーを必要とすることは避けがたい事実であり、おそらくは他のエネルギーと併用ということになると思われる。
 西オーストラリアは「エネルギー大国」であり、自前の「天然ガス」を日本をはじめ各国へ輸出している。
 いわば湾岸産油国と似た環境を持っており、それゆえに海水淡水化計画も軌道に乗りやすい条件になっている。

②.【シドニー】
━━━━━━━━
 次が「シドニー」(人口:430万人)で、現在建設中という。


○ 日豪プレス オーストラリア 最新情報 シドニー メルボルン ★ http://www.nichigo.com.au/news/nat_0707/02.htm

----------☆☆ 暴風雨、シドニーの貯水量を.... ☆☆----------
2007年7月7日

 シドニーに水を供給するダムは15あるが、水源の8割を占めるのは市街地から35キロ西にあるワラガンバ・ダム。
 シドニーの6月の雨量は466ミリに達したが、これは1950年以来2番目の記録で、一時30%台半ばまで下がったダム貯水量は2004年5月以来の50%を記録した。

 ただし、オーストラリアの農産物の40%を担うマレー・ダーリング流域の貯水量は昨年の21.4%からさらに10%に減るなど、オーストラリア全土の干ばつはまだまだ深刻な状況にある。
 ニューサウスウエールズ州のネーサン・リーズ水・公共事業相は、今後も水道の利用制限を継続し19億ドルの淡水化施設建設も予定通り行うと述べた。


 「オーストラリア干ばつの真相」より、一部をコピーさせていただきます。

○ オーストラリア干ばつの真相
★ http://オーストラリア干ばつ.jp/2007/12/post_140.html

----------☆☆ オーストラリア干ばつの真相 ☆☆----------
2007年12月

 渇水対策の切り札としてニューサウスウェールズ州政府が導入するのが海水の利用だ。
 シドニー空港対岸のカーネルに20億豪ドル(約2,000億円)もの予算をつけた海水淡水化プラントを2~3年後の完成を目指し建設する。
 くみ上げた海水を浄化後、高圧で脱塩フィルターにかけるもので、こうした海水の淡水化は西オーストラリア州でも試みられているものである。

 膨大な海水を使えるとあれば夢のような話だが、どうやら良いことばかりではなさそうだ。
 まず生産コストが高いこと。
 淡水化の工程で多大なエネルギーを消費し、結果的に温室効果ガスを出してしまうこと、海水をくみ上げることで生態系を壊してしまうこと。

 昨年のオーストラリア大干ばつでは、冬場の気温の高さで貯水池の水が蒸発し、渇水に拍車をかけた。

 そういう訳で現実味を帯びてくるのが、下水のリサイクルだ。
 シドニーの下水再利用は2%にとどまるが、海水の淡水化と比較するとコストは半分以下。
 もちろん下水のリサイクル、とくに飲用には強い抵抗を感じる人が多いのも事実だが、現在のところリサイクルされているのは「グレイウォーター」とよばれるトイレ以外の家庭生活排水のみ。

 また、再生した水は飲料用には使っていない。
 だが、下水を飲料水にまで浄化する海外での先例もあり、渇水がより深刻な地域では飲料水としての利用も検討されているようだ。


 この海水淡水化計画は当初「日量25万トン」で建設されるが、将来的には倍の「日量50万トン」をめざす予定であるという。
 また、このプラントが完成すると、シドニー市全体の電力消費量の2%がこのプラントで消費されるという。
 たったの「2%」では、「エネルギーの瓶詰め」と呼ぶにはふさわしくない数字だと思われるのだが。
 日本では夏場みクーラーの使用と甲子園野球のテレビ電力で軽く10%以上はアップする。

 なを、「グレイウオーター」というのは、日本でいうところの「中水」にあたります。
 最近の大きなビルでは、この使用が盛んで「節水型ビル」と呼ばれているものです。
 トイレ以外の水を集めて簡単な浄化水処理を行い、これをトイレの水に再利用するものです。
 条例で義務づけを検討している自治体もあるようです。

③.【メルボルン】
━━━━━━━━━
 3番目は近隣地区に施設を提案しているとしている「メルボルン」(人口:370万人)である。


○ 日豪プレス オーストラリア 最新情報 シドニー メルボルン ... ★ http://www.25today.com/news/2007/04/vic_38.php

----------☆☆ VIC州でも脱塩淡水化プラント検討 ☆☆----------
2007年4月09日

 メルボルンの渇水慢性激化に。
 4月7日付エージ紙は、ビクトリア州政府の依頼で専門家のパネルが脱塩淡水化施設に関する調査を行ない、「ビクトリアはすでに他の州に遅れを取っている」と警告した、と報道している。

 クインズランド、ニューサウスウエールズ、西オーストラリアの各州はすでに上水道用脱塩淡水化施設の建設に着手または完成している。

 メルボルン水道局の担当者は「海水水質、処理方法、経費、消費エネルギー量、立地などの他、経済、環境、社会などの条件についても調査する」としている。
 さらに、エージ紙はメルボルンの水需要を満たすためには「日産30万トン」の淡水化が必要と述べている。
 施設は段階的に建設していき、立地としては、高塩濃度の排水という問題があるがポート・フィリップ湾が候補として上がっている。

 西オーストラリア州ではすでにパース市の世帯向けに稼働しており、ニューサウスウエールズ州でもモデルとして採用された西オーストラリア州水道公社の「施設設計モデル」を購入するかどうかを検討中と報道している。パースの施設は日産14万4千トンで、イスラエルとアラブ首長国連邦の脱塩淡水化施設についで世界第3の規模である。

 ビクトリア州の関係者は、「少なくともパースの施設の2倍ないし3倍の規模が必要」としている。
 パネルの調査は2007年末までには完了する予定である。


 2007年6月にビクトリア州政府は総工費31億ドル(約3,100億円)で正式決定し、造水量は「日量41万トン」としている。

④.【アデレード】
━━━━━━━━━
 4番目は連邦財務大臣に「淡水化施設が一つもない」と言われた南オーストラリアの首都「アデレード」(人口:100万人)。
 情報不足、というよりほとんど干ばつに対する対策がとられていない。
 まとまった記事が見当たらないため、とりあえず、引き抜いた短文2本を載せておきます。


 1).
 マルコム・ターンブル連邦水資源相は2007年8月31日、国営放送ABCラジオ・アデレード支局でのインタビューに答え、「マレー川は1年で干しあがってしまうという想定が大きな懸念だ。
 恐ろしい事態だが、現実にありうることだ」と指摘した。
 南オーストラリア州やクインズランド州に対して、海水淡水化設備の建設など、あらたな水資源供給源となるインフラ整備への非積極的な対応を非難した。
 2).
 南オーストラリア州当局は、アデレード周辺の水を確保するため、マリー川下流に緊急のダムをつくることを検討中だ。
 州知事は、この旱魃は地球温暖化の恐るべき兆しではないかと述べている。
 ジョン・ハワード連邦首相も「この国は有史以来最悪の旱魃に見舞われている」と述べた。


 水のない川にダムを造っても対策にはならない。
 それにダムは、2,3年で造れるものでもないし、雨が降らないことには貯水できない。
 言い換えれば、アデレードは何もしないということである。
 何故、なのであろうか。
 アデレードという街はどうも、オーストラリアでも忘れ去られた街のようです。
 先般までは「F1レース」がありましたが、これをお金でメルボルンにとられてしまい、今は発信量がガタ落ちになっています。
 この南オーストラリアという州は農業州であり、それ以外の目立つ産業がなにもない。
 西オーストラリアはエネルギー大国ですが南オーストラリアは「貧乏国」なのです。
 つまるところ、やりたくとも先立つお金がないのです。
 ただひたすら、雨の降ってくれることを望むだけの州なのです。
 いいかえれば、自然そのまま、「エコタイプ」の州なのです。

⑤.ブリスベン
━━━━━━━━
 最後は連邦水源資源相に「海水淡水化設備の建設など、あらたな水資源供給源となるインフラ整備への非積極的な対応」を非難されたクイーンズランド州の「ブリスベン」(人口:180万人)。


○ 日本証券新聞 2007年12月27日 17:19 ★ http://moneyzine.jp/article/detail/17504

----------☆☆ VIC州でも脱塩淡水化プラント検討 ☆☆----------

 東レは25日、オーストラリアの大型膜法下廃水リサイクルプラント向けに逆浸透(RO)膜納入を受注したと発表した。

 同プラントは、オーストラリア東海岸の同国第3の都市でありクィーンズランド州の州都である「ブリスベン市」内に建設される「ラゲージポイント高度水処理プラント」で、造水量は「日量6.6万トン」、2008年秋稼働開始予定(膜納入も2008年)である。

 リサイクルされた処理水はダムに戻され、上水道や工業用水として再利用される見通し。

 近年オーストラリアは空前の干ばつに見舞われ、特に都市部における水不足は深刻である。
 したがって連邦政府や各州政府は水資源関係のインフラ投資を積極的に行い、海水淡水化や下廃水リサイクルプラントの計画が急増している。
 なかでも下廃水のリサイクルプラントは、通常の下廃水処理場に比べて省スペースであり、下廃水が発生する都市部でそのまま利用できる上、プラントも比較的安価なので、有望視されている。

 今回、東レが膜納入を受注したラゲージポイント・プラントは、同国の下廃水リサイクルプラントの中でも最大級のプラントで、クィーンズランド州政府の西部コリドー・リサイクル水プロジェクト(天候に左右されない水供給源確保が目的のオーストラリア最大のリサイクル水プロジェクト)の一環となる。

 この分野において世界各地で実績のある東レの汚れの付きにくい「低ファウリングRO膜エレメント」が採用されたことになり、東レとしても同国最大のプラントへの膜納入となる。

 東レの「低ファウリングRO膜」はクウェート国スレビアにある世界最大の膜法都市下水再利用プラント(造水量32.0万トン/日)を始め、シンガポール共和国セレターの下廃水リサイクルプラント(造水量2.4万トン/日)、中華人民共和国天津泰達廃水再利用プラント(造水量3.0万トン/日)等で採用されており、この分野での実績を着々と伸ばしている。

 逆浸透膜市場は、世界的な水不足の深刻化や環境に配慮した水資源確保の要請等から、年率8%以上で拡大を続けており、今後も米国、欧州、中東・北アフリカ、中国を中心に着実な成長が予想されている。

 海水・かん水の淡水化プラント用途やボイラー用水製造等の産業用途の伸びに加え、今回の「都市下廃水リサイクル」などの新しい市場が育ちつつあり、さらなる需要の伸びが期待されている。


 ここで最も注意すべきことは、「海水淡水化装置」と同じものが「下水再利用装置」として使われていることです。
 一考すればわかることだが、やっていることは同じということである。
 一方は塩分で、もう一方は下水分ということだけである。
 浸透膜を通過して出てくるのはどちらも「淡水」というわけで、海水淡水化として開発されたものがそのまま、下水リサイクルに転用可能だったということになる。

 「中水」はトイレ排水を除いた生活排水を処理したものである。
 しかし、東京でもそうだが都市の排水は合併型である。
 つまりトイレ、生活排水(雑排水)、雨水が一緒になっている。
 地中に埋め込まれている排水パイプにはこれらが一緒に流れて、汚水処理施設に送られる。
 まず汚泥が取り除かれ、次に浄化処理されて、川などに流し込まれる。
 このとき「浄化水は魚が住むのに支障のないレベル」にまでクリーンになっていないといけない。

 それをさらに浄化して、人間が飲料にするに差障りのない「精浄化水」にレベルアップさせるのが「下水再利用装置」ということになる。
 浸透膜を通過した清浄化水は飲料レベルのクリーン度をもっているが、しかし、どうもそのまま水道管に流されて飲まされるのは、誰にも心理的に抵抗感がある。
 そこで、一度、湖に戻され、一般の湖水にしてしまうわけである。

 こうなるともう浄化水か天然水かの区別はつかなくなる。
 湖水として取水口より取り入れられ、通常の浄水処理を施されて一般水道水として供給されることになる。
 逆の見方をすれば、清浄化水が常時循環供給されるということは、湖水が現在よりもきれいになるということであり、湖水の浄化にも役立つこととなる。
 ところで「日量6.6万トン」とはパースの全体計画の1/6に過ぎない。
 消費エネルギーは海水淡水化の半分となりメリットはあるが、問題はこれで水不足対策が成り立つのかということである。
 人口150万人のパースは州全体の水道の3分の1(日量約40万トン)を海水淡水化で生み出そうとしている。
 ところが人口が2割ほど多いのもかかわらず、造水量はパースの1/6である。


● まとめ
━━━━━━
 まとめてみます。

 1].
 オーストラリアの都市部での水不足対策は、積極的なパースから、何も出来ないアデレードまで、各層に分かれている。
 2].
 対策は海水淡水化方式の「パース型」が主流で、下水再利用方式の「ブリスベン型」もある。
 3].
 前者はエネルギー消費が大きく、後者は少ないが、造水量は前者が圧倒的に多い。



 <つづく>



【Top Page】




_

2008年1月23日水曜日

海水淡水化2:淡水化コスト


池島全景:長崎県産業観光情報サイトより


海水淡水化2:淡水化コスト
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 「軍艦島」をご存知でしょう。

 長崎にあった三菱の石炭採掘島、すなわち炭鉱の島です。
 小さな島に5千人からの人が住み、人口密度世界一を記録しました。
 その密度は東京の9倍もあったといいます。
 コンクリートの密集中層住宅が立ち並んでいたため、それが薄もやの中では戦艦「土佐」の形に似ていることからこの名前がつきました。
 しかし、1974年に石炭から石油へというエネルギー変換のために閉山し、無人島になりました。
 有名な島ですので検索エンジンでは「160,000件」と出てきます。

 その後、人口密度世界一を誇ったのが松島炭鉱の「池島炭鉱」です。
 役所関係の仕事で30年ほど前に訪れたことがあります。
 その当時、軍艦島が無人島と化していましたので、ここが人口密度世界一になっていました。
 地元の人は池島とは言わずに「貝島」といっていたように記憶しています。
 周囲4キロの島、従業員は当時で2,500人ほど。

 石炭の採掘には、まず縦坑を堀り、そこから横坑を掘っていく。
 採掘場所は2キロ、3キロ先の「海の下」になります。
 延べ坑道の長さは「96km」という。
 「入ってみますか」と言われ、「いや、時間がないので」と断った思い出があります。
 ここで採掘された石炭はほぼ製鉄用に使われる、と聞いた覚えがあります。
 しかし、この島もエネルギー革命には勝てず、2001年に閉山されます。

 この軍艦島や池島の「海底掘削技術」というのは日本独自のもので、ひじょうにレベルの高いものです。
 それが後の「青函トンネル」や「ユーロトンネル」、そして最近の「東京湾海底トンネル」に生かされてゆきます。
 極言すれば、青函トンネルもユーロトンネルもこの石炭採掘技術があったからこそできたといっても過言ではないのです。

 Wikipediaには「閉山後に炭鉱技術海外移転事業が始められ、大規模な鉱山事故が頻発する中国をはじめとするアジア諸国などより事業継続の要望が強く、現在もインドネシア、ベトナム人など年間約60名が技術伝承のため入国し働いている」とありますので、今なを技術移転に活躍しているということになります。

 池島炭鉱のホームページは下記になります。

○ 松島炭鉱(株)池島炭鉱
★ http://coal-mania.hp.infoseek.co.jp/ikeshima.htm

 サイトを見ていたら、現在ここは、なんとなんとヘッドライトのついたヘルメットをかぶって坑道の中まで見学することができるようになっています。

○ 長崎県産業観光情報サイト「ながさき 見・学・知」
★ http://www.nagasaki-tabinet.com/sangyo/shisetu/shisetu.php?s_id=40


 何で海水淡水化の話が池島炭鉱にとんでしまったかというと、そのときここでコンテナのようなものを見たのです。
 それに金属プレートが貼ってあって「造水機」と印字されていました。
 「造水機とはなんぞや」。
 下段には製品番号といっしょに「笹倉製作所」とありました。
 分野が違うのでまるで知らぬ会社でした。
 話を聞くと、この池島ではすべての水は海水から作り出し、本土からは運んでいないということでした。
 これはまるで知らないことでした。

 というのはそのときの池島のイメージは、「水」は向こう岸から運んでくるため十分使えず、日常ではシャワー程度で済ます、というものでした。
 もし、風呂に入りたかったら、週に一度ほど船で対岸へいくことになる、という発想でした。  ところが打ち合わせて会う人みな、こざっぱりしたまるで石炭粉の匂いのない方たちです。
 鼻の穴の奥までまで真っ黒になった坑夫たちが海の底から上がってきたとき、ゆっくりと湯船に浸かって温まる姿など想像もできなかったのです。

 思考の中に、海水から真水を生成するのはエネルギーコストが高すぎ、現実的に不可能であるという信念がこびりついていました。
 よくよく考えてみれば、この島、石炭の上にあるようなものでエネルギーはタダという環境を持っていたのです。
 しかし、その頃、いくらエネルギー「タダ」とはいえ、淡水化プラントが現実の話として稼動しているとは、まるで及びもつかなかったのです。

 「海水淡水化の現状と原子力利用の課題 」調査報告書を見てみましょう。


 日本国内で最初に淡水化施設を導入したのは長崎の松島炭鉱池島鉱業所である。
 1967年に生産水量「2,650トン」の蒸発法多段フラッシュ法プラントが設置された。
 前年に日本メーカーが海外で初めてサウジアラビアに納入した海水淡水化プラントと同型のものである。


 つまり長崎の炭鉱島で見たのは、日本で始めて実用化された海水淡水化装置の一部だったということになります。
 「2,650トン」とはどのくらいの量でしょうか。
 東京ドームの「約1/500」にあたります。
 それが日本ではじめて設置された造水機の能力ということになります。

 「笹倉製作所」というのを検索してみました。
 ありました。
 現在は名前が変わり「株式会社 ササクラ」です。

○ 株式会社 ササクラ ★ http://www.sasakura.co.jp/
----------☆☆ 株式会社 ササクラ ☆☆----------

1966年(昭和41年)6月
アラビア石油向け海水淡水化装置(2,300トン/日)を輸出
1966年(昭和41年)9月
松島炭鉱池島鉱業所へわが国初の陸上用海水淡水化装置(2,650トン/日)を納入
1967年(昭和42年)1月
クウェート国政府から当時世界最大の海水淡水化プラント(36,400トン/日)を受注
1971年(昭和46年)5月
逆浸透式水処理装置の製造開始


 一般的にほとんど名の知られていないこの会社は、世界の海水淡水化メーカーではトップクラスにあるようです。
 他には、日立、クリタ、三菱、石川島播磨、オルガノといった著名な会社が名を連ねています。
 この分野におけるこれまでの日本のメーカーの実績はアメリカについで2位になります。
 方式別だと蒸発法では1位、逆浸透法ではアメリカが1位で、日本が2位になっています。
 しかしながら最近5年間では5位というレベルに落ちており、イタリア、フランス、スペインといった地中海勢が上位に食い込み、それを将来水不足が懸念されている韓国が激しく追い上げている、といった状況のようです。

 ところで当然のことながら「エネルギーのビン詰め」といわれる「海水淡水化水」とは「いったい、いくらくらいのものなのか」という疑問が出てきます。
 この調査報告書にも正確なデータは載っていませんが、大筋のところが記載されています。

 先の報告書を見てみます。

 技術革新の目的は、淡水化コストの低減と運転・維持管理の容易さを求めて行われている。
 1980年代には、大型海水淡水化プラントによる淡水化コストは1m3あたり数ドルしていた。
 それが1ドル近くとなり、最近では1ドル(USドル)を切っている。
 このくらいになると、場合によっては天然水を長距離輸送したり、立地条件の悪いダムを建設するより有利になる。
 また開発途上国でも産業用に利用しやすくなり、ここ10年間以上の淡水化プラントの建設が毎年10%以上の成長を続けている理由である。


 「1m3=1トン」とは東京都でみてみると、家族4人の標準世帯が1日に使用する量にほぼ相当します。
 その価格が1ドル(120円)になります。
 もちろんこれは原価ですから、製品価格をその「3倍」と見積もって計算してみましょう。
 とすると下記の式より「水道料:年間13万円」、月1万1千円ということになります。

 (1人1日248リッター×4人/1000リッター)×365日×3倍×1ドル120円=130,349円/年  

 イザヤ・ベンダサンは「日本人は水がタダだと思っている」と言っていましたが、水は買うものであるという考えに立てば、この価格、どうでしょう。
 検索エンジンを走らせると、2,3のデータを拾うことができます。

 例えば、これ。

○ はてなブックマーク - 西半球最大の逆浸透法海水淡水化プラント ★ http://www.toray.co.jp/news/water/nr031019.html

----------☆☆ トリニダード・トバコの逆浸透法海水淡水化プラント ☆☆----------
2003年10月
  東レ(株)は、カリブ海にある島国トリニダード・トバコにある西半球最大の逆浸透法海水淡水化プラントに逆浸透膜(RO膜)を納入しており、現在世界で稼働中の逆浸透法を使った海水淡水化プラントの中で、最も安価な1m3あたり「$0.707(85円)」という造水コストを実現しました(取水からの一貫プラントベース)。


 あるいはこれ。

○ [PDF]ラッフルズ・プレイス・レター ★ http://www.north-japan.org/images/singapore/report_20.pdf

----------☆☆ シンガポールの水事情 ☆☆----------
2005年11月
海水の淡水化は、1990年代には1m3当たり「210円~245円」と言われていましたが、このたびの販売価格は、「55円」と世界でも最も安価な海水の淡水化といわれています。
 これを可能にしているのは、逆浸透膜などの世界的な技術開発の進展と、効率的な淡水化の可能な、水温が高く、かつ塩分濃度が比較的低い海水に恵まれていることが上げられます。


 条件にもよるようですが、大概のところ「1m3=100円」と見込んで、それを越えることはまずなさそうです。
 あくまでこれは原価で、製品価格はその3倍から4倍ということになるでしょう。
 おそらく、没頭の「オーストラリアの干ばつ」の方もこれを踏まえて、「なぜ、クインズランド州は海水淡水化をしないのだろうか」という疑問を提示したのではないかと思います。

 コストについては詳細なデータがないので、残念ながら正確なことはいえません。
 『(取水からの一貫プラントベース)』とはどういう内容を指すのか、海水を取水して淡水化してプラントから送り出すところまでの「造水費用」であるのか、それともプラント本体の建設費用をも含んだコストなのか、素人には分かりかねるところです。

 前者なら淡水化コストに建設費用は含まれないことになり、後者ならプラントの「償却期限」があるはずであり、20年くらいを想定しているのかと思います。
 社会インフラの償却期限は30年ということもありうる。
 プラント建設費の水道料にかかる費用を計算してみます。
 次回で最も新しい海水淡水化プラントとなる西オーストラリアの計画が出てきますので、そこからデータを引っ張ってみます。


 2007年に供給を始めた「日量12.3万トン」のプラントの建設費用が4億ドル(ASドル)である。
 また、2010年から供給予定の「日量27.4万トン」のプラントの予算が9億5千万ドルである。


 つまり、合わせて「日量40万トン」のプラントの建設費用の総額は13億5千万ドルということになる。
 これは年間水量「1億4500万トン」で、プラントの償却年数を20年と見積もると、20年間で作られる水の量は「29億トン」になる。

 13億5000万ドル/29億0000万トン=0.47ドル/1トン

 償却期間の20年間は「1トン当たり50円」ほどが上乗せされる、ということになる(借り入れ利息などは考慮していません)。
 「海水の淡水化に関する検討会」の調査報告書のウオッチングはこれで終了とします。

 次は没頭のサイトにあった「オーストラリアの干ばつ対策」について見ていきたいと思います。


<つづく>


注: 「コスト計算」は素人が電卓をはじいたもので、解釈その他に間違いがあるかもしれませんので、あらかじめお断りしておきます。



【Top Page】




_

2008年1月21日月曜日

海水淡水化1:基礎知識


クイーンズランド州:節水目標一人一日:140リッター


海水淡水化1:基礎知識
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 2002年にヨーロッパ大洪水が発生してチェコの世界遺産にも登録された古都プラハの建造物が水没したことは有名なニュースとなりました。
 また、2005年にはハリケーン・カトリーナがアメリカ本土を襲い、アメリカ大統領はルイジアナ州ニューオリンズ市に非難命令を出し、その数48万人であったといいます。
 ニューオリンズは水没し、今なをその機能を完全に回復していません。

 日本では昨今、雨量が異常に多く、Wikipediaの「集中豪雨」でみると1998年の「98高知豪雨」から突然現れはじめ、毎年のように続いている。
 「気象庁が命名した豪雨・豪雪一覧」では2004年、2005年、2006年にあり、豪雨だけでなく冬場は「こんな大雪、生まれてはじめて」という豪雪が2005年暮れから2006年はじめにかけて発生しています。

 その反面、四国では雨不足の干ばつが続き、四国の水甕である早明浦(さめうら)ダムの貯水率がついに0%にとどくの間近かというニュースもありました。
 これは運良く台風の襲来で解消されたようですが。

 お隣の中国の干ばつは規模がすこぶる大きく、9千万の人と7百頭の家畜の飲料水の確保が困難な状況にあるといわれています。

 南半球のオーストラリアもまた、観測史上最大の干ばつに見舞われています。
 連邦政府、州政府も日々その対策に追われており、一部の州では下水処理した水を水道に混入する政策を、州首相の強権で実行に移しています。
 この案は他州では住民投票で否決されているものですが、住民がなにを言おうと今はなりふりかまわず実行するしかない、という土壇場まで追い詰められているといった状況になっているということです。

 その模様を下のサイトから一部をコピーさせてもらいます。

○ 環境法令ウオッチング
★ http://blog.goo.ne.jp/o-gyousei/e/0707461a240c400ad017c3c29801

----------☆☆ 地球温暖化:オーストラリアの干ばつ ☆☆----------
2007年1月31日
 国連環境計画(UNEP)は、 2000~2005年の間に観測された氷河融解のスピードが、1980年代の3倍に達した、とするデータを公表しました。

 データのもととなった調査によると、欧州アルプスなど世界の9山脈、約30か所の氷河の厚さは、平均で年約60センチ減少しており、この数値は1990年代の1.6倍、1980年代の3 倍のペースに相当するとのことです。
 上記の調査結果は地球温暖化の進展を示唆するものといえますが、その影響はたとえば次のようなかたちでもあらわれはじめています。

 「干ばつに苦しむオーストラリア北東部クインズランド州政府は28日、下水を飲料用にリサイクル処理した水を同州の一部で2008年から使用すると発表した」(平成19年1月29日読売新聞)。
 オーストラリアでは、ここ数年干ばつが続き、慢性的な水不足に晒されていました。
 その原因は、地球温暖化の影響であるとされています。
 それを裏付ける数値として、『オーストラリアは気温も世界平均と比べて速いペースで上昇しており、最も暑い年の記録上位20のうち15は1980年以降の年で占められている』との報告がなされています。

 報道されているクインズランド州では、「下水再利用」の是非を問う住民投票も取りやめるとのことで、切羽詰った状況がうかがえます。

 水不足の対策としては、たとえば、「海水淡水化」があります。
 海水淡水化は文字通り、海水を処理して淡水を作りだすもので、中東諸国などで用いられている方法です。

 しかし、海水淡水化には、多量のエネルギーを投入する必要があったり、プラントの整備に多額なコストが発生したりします。ニュースにある下水のリサイクルに比べれば、心理的には海水淡水化のほうが受け入れられやすいと思いますが、クインズランド州の場合は、それを選択できない事情があるのでしょう。


 地球温暖化は別の回に譲ずり、今回は「海水淡水化」について電子網を検索してみます。
 「海水淡水化」だと十万件になるが、「世界の海水淡水化」「海外の海水淡水化」「外国の海水淡水化」「オーストラリアの海水淡水化」で検索するとそれぞれ500件前後出てくる。
 「日本の海水淡水化」も同様である。

 まず、『海水淡水化の現状と原子力利用の課題 -世界的水不足の解消をめざして-』という調査報告書があります。
 「社団法人 日本原子力産業協会」の「海水の淡水化に関する検討会」が平成18年(2006年)に出したレポートである。
 [PDF]なので必要なところを抜粋タイプしながら、これを中心に見ていくことにします。


○ 海水淡水化の現状と原子力利用の課題 ★ http://www.jaif.or.jp/ja/news/2006/desalination_report.pdf

----------☆☆ 海水淡水化の現状と原子力利用の課題 ☆☆----------

 1950年以降の「水需要増加率」は「人口増加率」のほぼ3倍となっている。

 このまま推移すると2025年には世界の約半数の国と地域が水不足に陥ると予想されている。
 こうした状況から、各国において海水から真水を精製し、生活用水や農耕行用水として利用する「海水淡水化」の取り組みが行われているが、海水淡水化のニーズは今後とも、中東諸国を中心に高まっていくことが予想されている。

 原子力利用による海水淡水化については近年では地球温暖化問題等の観点から再評価され、一部の国では原子炉を使った淡水化技術実証試験も行われ、その導入に向けた動きが始まっている。


 国連レポートによると2025年の推定世界人口は75億人でその50%が水不足に直面する。
 それによるとアラブとアフリカの一部が「水不足」となる。
 また、韓国、バングラデシュ、インド、アフガニスタン、ペルーとアフリカの一部が水不足予備軍になるという。

 我々が水不足を実感として捉えられるのは家庭水道の使用量に制限が加わったときです。
 一日一人の使用量を比較してみると、ニューヨークでは「517リッター(2003)」です。
 これに対して東京では水道局のホームページ「わたしたちの水道」によると「248リッター」である。
 またマンション等の屋上に設置されている受水タンクを設計するさいの容量計算基準では、標準家庭の1日の使用水量は1人「230リッター」となっています。

 上に掲げたパンフレットのように、水不足が深刻な上記のオーストラリアのクインズランド州では節水目標を一人一日「140リッター」と定めている。
 東京の60%くらいにおさえようとしていることになる。

 地球の3割が陸で、7割が水である。
 その「97.5%」が海水で、残りの「2.5%が真水」である。
 さらにその真水の7割は南極大陸やグリーンランドの氷河であり、残りの大半は土壌中に含まれる水であるという。
 つまるところ、人が利用できる水とは、真水の中の「0.007%」に過ぎないという。
 よって新規の水を得ようとすれば海水の淡水化という問題が大きなテーマになる。

 覚えておられる方も多いと思うが、「イザヤ・ベンダサン」という著名な作家がいた。
 「日本人とユダヤ人」という本を書いた人である。
 日本人だという説が有力ですが、「日本人は安全と水がタダだと思っている」という言葉で有名になったユダヤ人(?)です。



 真水の入手の難しい湾岸諸国やイスラエルなどは国策として「すべての水」を海水から作り出しています。
 海水から取り出した水は「エネルギーの瓶詰め」といわれるほどの代物です。
 石油タダという産油国である湾岸諸国は問題ないがイスラエルは石油が出ない。
 さらにイスラエルは周囲の産油国がイスラム教に対してユダヤ教で常に敵対的関係の中に置かれている。
 そこから石油を買い、この「エネルギーの瓶詰め」を作りだすとなれば、コストはうなぎのぼりで、まさに「水とはダイヤモンドほどの価値なもの」になる。
 イスラエルは産油国とは違った方式で海水の淡水化を実行している。

 Wikipediaを抜粋してみよう。

 海水淡水化(かいすいたんすいか)とは、海水を処理して淡水(真水)を作り出すこと、及びその設備を指す。
 海水には「約3.5%」の塩分が含まれており、そのままでは飲用に適さない。
 飲用水とするためには塩分濃度を少なくとも「0.05%以下」にまで落す必要がある。
 海水淡水化プロセスの基本は海水からの「脱塩処理」である。
 実用化されている海水淡水化方式は「多段フラッシュ」「逆浸透法」の二方式である。

[ 多段フラッシュ]
─────────
 海水を熱して蒸発(フラッシュ)させ、再び冷やして真水にする、つまり海水を蒸留して淡水を作り出す方式である。
 大量の淡水を作り出すことができ、海水の品質を問わないが、多量のエネルギーを投入する必要がある。
 エネルギー資源に余裕のある中東の産油国に多く採用されており、多くの国々では飲用水のほとんどをこれら造水プラントで生産している。
 サウジアラビアの海水淡水化公団では多段フラッシュ法の大型海水淡水化プラントを多数稼動させている。
 例えば1981年に稼動したジェッダNo.4プラントの生産水量は「日量22万トン」であり、2005年9月現在の世界 最大は同公団がアシュベールに持つ「日量100万トン」のものである。
 サウジアラビアではこれらを工業用水や一般家庭用水の主水源としており、更に余剰の淡水を農業用水としても利用している。

[ 逆浸透法]
───────
 海水を圧力をかけて逆浸透膜と呼ばれるろ過膜の一種に通し、海水の塩分を濃縮して捨て、淡水を漉し出す方式である。
 フラッシュ法よりエネルギー効率に優れている反面、浸透膜が海水中の微生物や析出物で目詰まりしないよう入念に前処理する必要があること、整備にコストがかかること、などの難点がある。
 1990年代までは比較的小規模のものが多かった。
 しかし、最近の日量1万トンを超える大型プラントは、世界的にみても大部分がこの形式で建設されている。
 2005年10月現在、世界最大の逆浸透法海水淡水化プラントはイスラエルのアシュケロンにあり、「日量33万トン」の淡水を工業用や家庭用に供給している。
 他に中東地域、地中海沿岸、シンガポールなどに大型プラントが多い。

 日本最大のものは福岡市東区にあり、淡水供給量は「日量5万トン」である。
 尚2006年現在、世界で海水淡水化用の逆浸透膜を最も多く製造している国は日本であると推定されているが、生産国が日米欧以外の国々に拡大し、それらの国々での統計データが不明であるため、必ずしも正確ではない。


 まとめるとこうなる。

 エネルギー無尽蔵な産油国と、非産油国とでは淡水化の方式が異なる。
 エネルギー事情の悪い地域では膜浸透方式が採用され、石油価格の高騰とともにこの方式が世界の主流になりつつある。
 そして日本でも淡水化が実行されている。


 エネルギー無尽蔵の産油国の淡水化は論の対象にはならないので、イスラエルを見てみる。
 「日量33万トン」とは、いったいどのくらいなものか。
 一般の分かりやすさ表現では、建物・場所などの面積や大量の物の体積を表現する際に「東京ドーム何個分」という表現が使われることがありますので、これを利用してみます。

 東京ドームの容積は「1,240,000立方メートル」であり、1m3を1トンとすると「1,240,000トン」になる。

 とすると、33万トンとは東京ドームの26.6%、「約1/4」個分になる。
 すなわち、毎日、東京ドームの1/4杯分の海水が真水に変換され、供給されていることになる。
 通常、先に述べたようにオーストラリアでの節水目標は一人一日「140リッター」である。
 報告書によると農業用水、工業用水、それに生活用水の水使用量の割合は「71%:20%:9%」という。
 生活用水の11倍が一人当たりの水使用量になる。
 計算すると33万トンという水は「21万人」の人口を養えることになる。

 330,000トン/(140リッター×11倍)= 214,286人

 ちなみにイスラエルの人口は「650万人」であり、その3%を養えることになる。
 農業用水を除くと「66万人」で10人のうちの1人に供給可能になる。

 日本の農業は水田耕作なので、世界の農業用水量とは比較できない。
 それを除いて(都市人口として限定)福岡市の日量「5万トン」をみてみる。
 工業用水を生活用水の倍とし、一人当たりの使用量を「230リッター」とすると、「7万人」に水の供給が可能になる。
 生活用水だけなら「約22万人」に供給可能になる。
 なを、2006年の福岡市の人口は「136万人」である。

 50,000トン/(230リッター×3倍)= 72,464人

 こうしてみると、海水淡水化というのはひじょうに重要なテーマであることが分かってくる。
 調査報告書へもどろう。


 現在、日本で最大規模の淡水化施設は2005年3月完成した福岡地区水道企業団海の中道奈多海水淡水化センター「日量5万トン」と、1996年2月供用開始の企業局海水淡水化センター「日量4万トン」の逆浸透法海水淡水化プラントが代表的なものである。
 最近の20年間に日本国内に設置された淡水化プラントの用途をみると、工業用が73%、生活用水用が22%、発電用が5%となっている。
 工業用では、半導体洗浄用の超純水や発電所などのボイラ用純水が大きく、全淡水化施設の60%を占めている。


 ちなみに、世界での用途をみると日本とはまるで逆で生活用が65%、工業用が24%、農業用は1%しか使われていない。
 農業用に使えるほど水は「安価ではない」ということである。
 報告書を続ける。


 2003年末現在までの世界の施設容量合計は日量「3,700万トン」である。
 2005年から2015年までに新たな施設容量の増加は、中東湾岸地域と地中海地域が、それぞれ日量「500万トン」からそれ以上の施設が建設予想されている。
 伸び率では地中海沿岸が最も多く「180%」の増加、中東湾岸諸国が「95%」の増加が予想される。
 産油国を除いた2015年までの増加予測はイスラエル「135万トン」、スペイン「104万トン」、アメリカ「94万トン」、そして中国が「40万トン」である。
 淡水化プラントの記録をみると、世界最初の淡水化プラントは、1944年にイギリスに設置されている。
 現在、世界最大の海水淡水化プラントは上記のサウジアラビアのものであるが、逆浸透法のものでは上記のイスラエルのものが最大である。
 淡水化の需要は過去30年間で12倍になり、2001年には日量「3,000万トン」になり、2003年末の集計では「3,700万トン」を越えた。
 近年では10%以上の割合で伸びており、2080年には「5,800万トン」になるという予測もある。
 とくに「逆浸透法」が急速に増大しており、2003年現在、逆浸透法が蒸発法を追い越し、全体の「51%」に達している。




<つづく>




【Top Page】




_




_